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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第9回 藤野涼子賞青少年部門
三百六十羽の鶴
柏崎 成美(青森県)
私が小学校六年生の時の十月下旬ごろの土曜日だった。その日、私の祖母が病院に運ばれた。
どうやら足の骨を折ったらしい。今まで元気にすごしていた、いつもの祖母の様子とは全く違ってとてもか細い声で、
「ごめんね。」
と一言。そばにいてとてもつらかった。
祖母は入院することが決まった。およそ二か月ほど入院になるのだという。
十二月には祖母の誕生日がある。「家でむかえられないのはかわいそうだな」と思った。でも、誕生日プレゼントならあげることができる。私は、誕生日プレゼントを作ろうと決めた。
何を作るか、それは決まっていた。折り鶴である。折り鶴といえば千羽鶴だが、一人で千羽折るのは難しいと思った。そこで、三百六十羽折ることにした。なぜ三百六十羽かというと、円の一周は三百六十度、何ごとも丸くおさまるようにという願いがあるからだ。
早速一羽一羽を折っていく。一羽およそ二分程度。この日、数十羽折ることができた。
数日後、私は日記の宿題に「この数日で祖母の為に鶴を百二十羽折った」ということを書いた。すると次の日、担任の先生から「折り紙をもってきて。手伝いますよ。」というコメントが返ってきた。
うれしくて、次の日、早速折り紙をもっていった。そして、担任の先生に渡した。すると、周りの友達が
「何してるの。」や、
「私も折りたい。」
などと声をかけてくれて、みんな楽しそうに手伝ってくれた。そして、先生もたくさん鶴を折ってくださった。
もちろん、友達や先生に手伝ってもらえてうれしかった。でもそれよりも、一人で折る時は少し気後れしたこともあっただけに、みんなで楽しく協力して鶴を折ることができたのは本当にうれしかった。
残り二百四十羽もあったが、手伝ってくれたみんなのおかげで、あっという間に十羽、二十羽、三十羽......と増えていき、数日後には全て折り終わることができた。大きな達成感を味わえた。
折るのを手伝ってくれた人たちもみんな達成感があったのか、笑顔だった。こうして、手伝ってくれた人がいたから完成した三百六十羽の鶴。ところどころ不格好な部分はあったが、それも含めてとてもきれいだった。
完成した鶴を渡すころ、祖母はだいぶ回復してきているようだった。三百六十羽の鶴を祖母に渡すと、
「すごいね。ありがとう。」
といってくれた。
小学校生活最後の秋、「小さな助け合い」が私にとって最高の思い出になった。
(原文のとおり掲載しております。)