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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第9回 優秀賞青少年部門

紅白帽のウルトラマン

加笠 瑞穂(東京都)

援助。

立場が弱い人等を助ける事。

私もカンボジア募金をするまではそう思っていたし、日常でも違和感を覚える事なく使っていた。それなのに、やけに"援助"を使わなくなったのはいつからだろうか。

小学五年生、春。

此処までは私の価値観は揺らがない。教師が総合学習のテーマとして、カンボジアのとある田舎の小学校への寄付を提案し、私達は満場一致で可決する。その後私達はカンボジアについて調べ、貧富の差や内戦を知って、「可哀想」と思い「助けてあげたい」と言う。

この事に違和感を覚えたのは一枚の写真だった。地雷によって脚を失った少年や貧相な身なりをした少女等、「可哀想」な子供達が到底真似できない満面の笑みで写っていた。それはもう、楽しげに。

それを見て、ふと気付いた。

私が感じた違和感は、それだったのだ。ずっと貧しい子供達が哀れだと思っていた。でも、今私はそれを否定する。そんな訳がない。貧富など関係なく幸福は存在するのに、私は自分の価値観で彼等を不幸だと決めつけて哀れみ、自分を彼等より上に立てていたにすぎないのだ。"助けてあげたい"という思いがいかに傲慢なのか知れた気がした。

それ以降、私達は一度も彼等を可哀想だと思わなかった。今自分達が彼等に足りない物資を集めるのは、援助じゃなくて助け合いなのだと誰もが分かっていた。熱心に全校生徒に訴えた結果、歴代の寄付活動でダントツ一番の物資が集まり、それを私達は送った。

翌年。カンボジアの某小学校から感謝の手紙が届いた。文はクメール語でさっぱり分からなかったけれど、送った色鉛筆で描かれた歪な富士山を見た時、言語の壁も物理的な距離も越えて私達と彼等は友達になれたのだと思い、つい笑みが溢れた。彼等は私達の価値観を変え、私達の寄付は彼等に役立った。こうして人の役に立つ事が"支え"かつ"助け合い"なのだと切に感じた瞬間だった。

上から手を差し伸べるのが援助。同じ立ち位置で互いに手をとるのが助け合い。だから、国を越えた助け合いを表す絵は、必ず地球を中心に円をつくり互いの手を握りあっているのだな、と今になって気付いた。

後日、教師が某小学校を訪れてきた。

「紅白帽をプレゼントしたら、大真面目な顔で、少年が帽子をウルトラマンにしてかぶったんだ。『これであってますか?』ってね。嗚呼、言語が違おうが、国が離れていようが子供の"根"の部分は変わらないんだなって妙に感動したよ。」

そう言う教師に、私達は顔を見合わせ誰ともなしに吹き出した。

何故か、無性に嬉しかった。

(原文のとおり掲載しております。)

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