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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第9回 入選青少年部門
私の手が使えない時
岸 和奏(群馬県)
「学級委員は岸さんでお願いします。」
私は、小学四年生の時、学級委員になりました。三年生までは学級委員がなかったので、あこがれていたのです。ところが、学級委員になってすぐ、私は、骨折をしてしまいました。きき手の右手が使えなくなり、手術のために入院もしました。
退院した次の日から、私はすぐに学校に戻りました。ランドセルを背負うことができず、ななめにかける大きなバッグで登校しました。私は、登校の時と、字を書く時と、給食の時しか困らないと思っていましたが、学校に着いて、くつをぬぐのにも時間がかかりました。「これじゃあ、授業の準備をするだけで、一日が終わっちゃう!!」と思いながら教室に入っていった時、たくさんの友達が、私の席まで来て、準備を手伝ってくれました。授業の時は、となりの席の男子がいつもこっちを気にかけてくれて、線を引く時に、サッと定規をおさえてくれました。給食を準備する時に、同じ班の友達が、牛乳配りと代わってくれました。そうじの時に、ほうきと代わってくれました。帰りの準備も手伝ってくれました。
最悪な一日になるはずだった日が、クラスの友達のおかげで、最高の一日になりました。学級委員の仕事どころか、ふつうに学校生活もおくれない自分を、たくさんの人たちが、支えてくれました。宿題が免除になったのにズルいとも言わないで、やさしくいろいろなことを手伝ってくれた友達、私のことをいつも気にかけてくれ、病院におみまいに来てくれた先生、そして、なるべくいつも通りに生活ができるように考えてくれた親に、感謝の気持ちでいっぱいです。
私は、この右手なし生活の間に、自分一人では生きていけないことを、改めて実感しました。いつ、ふつうの生活ができなくなるかわからない、そんな綱渡りのような人生を支えてくれるのは、まわりのみんなです。だから、なにかあったら一人で背負いこまないようにしようと思います。そして、友達が困った時は、必ず自分から助けに行きます。あの四年の時の恩返しができるように...。
(原文のとおり掲載しております。)