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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第10回 入選青少年部門
助け合いから生まれるハーモニー
川田 江梨花(兵庫県)
ゴォゴォゴォゴォゴォゴォ......
「晴れてるのに雷?」
月曜の朝、いつも通り登校した私は下駄箱で上靴に履き替えようとしていた。しかしそのただならぬ気配にすぐに違うと気付いた。その瞬間、自分がどこに立っているのか分からないほど地面が揺れているのを感じた。大阪府北部地震だった。学校から保護者へすぐ一斉連絡がいき、私達生徒は保護者が引き取りに来て順次帰宅することになった。登下校に利用していた電車は既に不通になっていた。不安の中、先生から私の母は家の事情で迎えに来ることが出来ない為、友達のお母さんと一緒に帰って来て欲しいということを伝えられた。心細かったが、友達のお母さんがタクシーで迎えに来てくれ、私は倒れるように後部座席の窓際に乗り込んだ。ドッと疲れが押し寄せてきてボーっと外を眺めていると、歩道で小さな人だかりがあるのが見え、次にうつ伏せになった体が一瞬見えた。『おじいさんが倒れている!』私は隣に座っている友達とそのお母さんに伝えた。
「おじいさんを助けよう!」
と、友達が力強く言った。
「近くの駅に行けばAEDが確かあるはず!」私は即座に提案した。なぜなら、以前その友達が下校中に駅でおばあさんが倒れているのを発見し、すぐにAEDを持ってきて大人に協力したという体験談を聞いていたからだ。
「すみません!車を停めてください!」
友達のお母さんが運転手さんに呼び掛けてくれ、車は私達が降りやすいところに停車した。私と友達は駅に向かって走り、駆け込んだ。
「人が倒れているんです!」
駅員さんに叫びながら改札に入った。設置されていたAEDを外そうとすると警報音がけたたましく鳴り、周囲にいた人達がギョッとして振り向いた。その直後、
「今、救急車が来たわよ!もう大丈夫よ!」
友達のお母さんが私達に駆け寄って来て言った。その途端、私と友達はへなへなと力が抜け、『本当に良かった...』と互いに見つめ合った。
結局、私がおじいさんを直接助けたわけではない。でも、もしあのまま倒れているのを横目で見ながら通り過ぎてしまっていたら、後日罪悪感で胸が締め付けられていたはずだ。そして友達や、私の母の代わりに迎えに来てくれた友達のお母さん、臨機応変に対応してくれたタクシーの運転手さんの連携がなければ全て行動に移すことが出来なかったと思う。迅速に救急車を呼んでくれた人も含めて、たくさんの人達の一つ一つの小さな助け合いでこの世界が成り立っているんだと改めて強く感じ、私は温かい気持ちに包まれた。助けられた人、助けた人、助けようとした人から生まれた幸せのハーモニー。そんなハーモニーがこれからも世の中に溢れるように、私は「自分に何かできることはないか?」と、常に心に留めておける人であり続けたい。