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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第13回 未来応援賞作品・入選者
宝物の五円玉
大垣 諒真(神奈川県・関東学院中学校)
今から三年前、僕が小学四年生、十歳の時です。その日はお母さんの誕生日でした。
いつもは手紙を書いて渡す程度でしたが、今年は何かプレゼントを買って驚かせたいと思っていました。
夕方、弟とお母さんがお風呂に入りました。三十分は出て来ないので今がチャンスです。おこづかいが入っている財布を握りしめ、走って一番近くのスーパーに行きました。
一番お母さんに似合いそうな小さなヒマワリの花が三本入っている三百九十円の花束に決めてレジに行きます。「ピッ、四百二十一円です。」レジの人に言われ、あわてて財布をのぞくと全部で四百六円しか入っていません。そうです、当時の僕は書いてある金額に消費税がプラスされる事を忘れていました。
「え...あっ...どうしよう。」パニックになり泣きそうになっていると隣りで会計をしていたおじさんが「どうしたの?」と声を掛けてくれました。「お金が足りないんです。」と言うと、「この花誰に渡すの?」と聞いてきたので、「今日お母さんの誕生日なのでお母さんに...」と話したら、レジと僕の持っているお金を見て、「ほらこれで買えるよ。」と二十円渡してくれたのです。「えっいいんですか?」と言うと、「いいよ、お母さん喜んでくれるといいね。」と笑って言ってくれました。そのまま帰ろうとしていたので大きな声で「ありがとうございました!」とお礼を伝え、無事に花を買う事が出来ました。まだドキドキしていたけど、急いで家に帰りました。弟とお母さんはまだお風呂から上がっていなかったのでセーフです。花を隠して汗を拭きました。
夜に花を渡したらお母さんはすごく驚いて「ありがとう。」と泣いて喜んでくれました。僕も嬉しくなって、頑張って買いに行って良かったなぁと思いました。そして、買い物の出来事を話すと、「助けてもらってそのおじさんに感謝だね。もしいつか会えたらもう一度一緒にお礼を言おうね。」と言ってくれました。残念ながらそのおじさんにその後会えてはいませんが、今でもその時財布に残った五円玉は大切に取ってあります。
この経験をしてから、困った人がいたら助けてあげたいという気持ちを持つようになりました。弟の面倒も良く見るようになったし、友達に勉強を教えてあげたり、悩みを相談される事もあり、三年前よりも周りから信頼されている気がします。これからの目標は、知っている人だけでなく、知らない困っている人も助けてあげたいという事です。中学生になり、電車通学になったので、困っている人がいたら勇気を出して声を掛け、席をゆずってあげたいです。
直接は言えないけど、あの時僕を助けてくれたおじさん、本当にありがとうございました!