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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品

第15回 ハートウォーミング賞作品・入選者

私の手を待っている人に

加藤 和子(京都府)

 結婚してこの町に住んで五十年が過ぎました。来た当時は二十代、三十代の若い家族が多くとても活気がありました。
 時は流れ子供達は巣立ち、親を見送り、それぞれの家庭は夫婦二人になり又どちらかが先に亡くなったりと、お一人暮らしの方が次々と増えこの町内も淋しくなってきました。
 一人では足が悪くゴミを出せない方、新聞を自宅の門まで取りに行けない方、昨年まで毎日綺麗に表を掃いてられた方も今は外に出て来られません。
 そんな小さな事ですが近所の方と協力して今日に至っています。
 十数年前になりますが町内会の会長を受け持った時から、お一人暮らしの家庭の灯りが点いているか確認の為都合が許す限り毎晩見回りする事にしました。
 三年前いつも通り灯りが点いている一人暮らしのお宅を問題ないと思い三日程過ぎました。しかしその方は夜仕事から帰って電気を点けてから倒れたらしくポストに新聞が溜まっていて、結果として無念な思いをしました。
 それからの夜回りは特に気を配り注意していると体調がすぐれないと話していた一人暮らしの家の灯りが点いていない。
 いつも玄関先の左の部屋の灯りが点いているのに......。
 ベルを押すにも二十二時前なので心配しながらも朝を待った。
 町内の役員の方に連絡しベルを鳴らした。
 何度鳴らしても応答はない。役員の方が電話を掛けても出られない。新聞は夕刊と朝刊が入っている。以前の無念な思いを繰り返してはならないと、役員の方と相談の上一一九番に連絡しました。
 レスキュー隊や救急車の方々が駆け付けて下さり、時間はかかりましたが妹さんが少し離れた所に住んでいる事が分かり持って来た鍵で開け、部屋の中は異常がない事が確認でき心配して見守っていた近所の方達も「良かった‼」と拍手が湧いた。
 ご本人は昨日具合が悪くなり病院に一日入院されていたらしく夕方帰って来られ今回の事にとても感謝され、妹さんも皆さんにこんなに大切に思って頂いてと喜んでおられた。
 近所の奥さんは「これから今回みたいな病院に行く時は言ってね」と声をかけていた。
 私の中で特に隣人に心を寄せる様になったのはマザーテレサが来日された際テレビで話された「遠くへ行かなくっていいのです。あなたの傍であなたの手を待っている人はいませんか」この言葉は今も人生の指針となり小さな事でも体が動く限り私の手を待っている方達のお役に立ちたいと願っています。

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