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「小さな助け合いの物語賞」受賞作品
第15回 未来応援賞作品・入選者
言葉を超えた優しさ
メニクプラ・メナーディ・ガヤツナ
(千葉県・高校生)
小学校五年生の夏、私は、父が暮らしている、日本に母と妹二人とスリランカから引っ越してきました。日本に来たばかりのころ日本語が全く話せず、周りの環境にも馴染めていませんでした。
そんなある日、父に「経験にもなるし、日本語の勉強にもなるから、駅まで一人で行って、好きな物を買ってきなさい」と突然言われました。私はその時、「ありがとう」「ごめんなさい」のような簡単な日本語しか知らなかったので、誰かに何かを聞かれたらどうしようととても不安でしたが、頑張ってみようと思い、バスに乗って駅に行きました。私は、筆箱を見るために、文房具屋を探しました。看板には漢字表記のものが多く、不安でいっぱいになりました。周りをきょろきょろしながら泣きそうになっていると、日本人の女性が近寄ってきました。何か聞かれたらどうしようとますます不安になり、その場から消えたいと思いました。すると、その女性は「お嬢さん、大丈夫?」と声をかけてくれましたが、私は混乱していたので頷いてしまいました。女性は「ごめんなさいね」と言って、離れて行ってしまいました。私は落ち着いて、「大丈夫」という言葉の意味を思い出しました。やっとその意味を思い出し、その女性が伝えたいことを理解しました。その瞬間「この人に助けを求めよう」と思い、その女性を追いかけました。そして、今度は英語を混ぜながら「ノーダイジョウブ」と伝えました。すると、その女性は「やっぱりそうだったのね」と私の手をとり、「大丈夫だよ。困ってたのね」と言ってくれました。私は、初めて日本の方に自分の言葉が通じたので、とてもうれしくて、泣いてしまいました。
その後、その女性は私に飲み物を買ってきてくれました。そしてスマートホンの翻訳アプリを開きながら、話を聞いてくれました。私が「文房具屋に行きたいので場所を教えてください」と入力すると、その女性は「一緒に行こう」と伝えてくれました。私はすごくうれしくて、「はい!」と大きな声で返事し、欲しかった筆箱を買うことができました。そして、バスで帰る時も翻訳アプリで色んなお話をして、お互いを知ることができました。その女性は、ボランティアで日本語を教えている方で、前にも同じように困っている人を助けたことがあったそうです。別れ際、その女性は私に小さな紙切れを渡し「またね」とバスを降りて行きました。その紙切れには、電話番号と日本語が書いてありました。家に帰った後にその日本語を翻訳してみると、「また何か困ったことがあったら、電話してね。日本語の勉強頑張ってね」と書いてあることがわかり、すごく感動しました。こんなに優しい人がこの世の中には存在するのだと思って、すごく温かいきもちになりました。そして、その時「私もいつか日本語がうまく話せるようになった時に、困っている人がいたら助けよう」と心に刻みました。